嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-
私たちは涙を拭い、
向かいのダイちゃんの家に向かった。
ダイちゃんの母親、直子さんは
年頃の私を気にかけてくれていた。
そして
ダイちゃんの姉のシホちゃんとは
3年ほど顔を合わせていない。
家を出て一人で暮らしているらしい。
モデルのようにスタイルが良く、
CMに出て来るような綺麗なお姉さんだ。
「お前たち、腹減っただろう??」
「減った~!!!」
健太の反応に
ダイちゃんは腕まくりをする。
「じゃ……俺が何か作ってやるか!!」
私が遠慮がちに
「良いの?」と首を傾げた。
「良いから気にするな!!
葵もゆっくりしてろ!!」
ダイちゃんは
私の頭をクシャクシャと撫で、
ニコッと笑った。
「あ、そうだ!!
健太の背中、
ちゃんと消毒して薬塗ってやれ。
そこの引き出しに救急箱が入っているから」
キッチンから指された戸棚を開き、
救急箱を取り出すと、
TVゲームに
夢中になっている健太の服を捲り上げた。
消毒液を染み込ませたコットンを
赤く化膿した傷に当てる。
「痛ァァ!!!」
身体をビクッとさせながらも、
コントローラーを放さない健太。
うちは、ゲームを買う余裕がない。
転職を繰り返す
お父さんの収入は安定せず、
公共料金を滞納することもあった。
今は建設現場で
日雇いの仕事をしているが、
長く続くか……。