嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-


「おい!!
お前たち、うるさいぞ!

若い子が来たんだ。静かにしろ!!」



初めて聞くような
低い声で、

緒川さんはその女性たちを注意した。



「は~い」と
素直に答える女性たちの視線が
私に向けられた。



「あ!!!
この子知っている!!

うちにレーベルから
DVD出した子でしょ!!」



「え?!ウソ!!!葵ちゃん?」



私の顔を見て、
女性たちは「可愛い!!」と声を揃える。



普通、
“可愛い”と言われたら、

嬉しいはずなのに、
ちっとも嬉しくなかった。



それは心から言っているわけではないと
分かったからだ。


私が“子供”というだけで
可愛いと言っているだけで、

目も決して笑っていない。


冷ややかな視線だけが痛かった。



「じゃ、葵ちゃんは
こっちの部屋に来てくれるかな」



パーテーションで
区切られた個室に通され、

イスに腰を下ろす。



「ごめんね。
さっきの子たち、
うちで抱えているモデルなんだ」



「みなさん綺麗ですね」



化粧が厚く
服装も派手で

水商売の女性に見えるが、
綺麗な人たちだ。



「前に話したことがあると思うけど、

うちはアダルトビデオも
作ってる会社で、

あの子たちはその女優なんだ」



「……えっ?
そうなんですか??」


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