嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-



「とりあえず、
明日は家まで迎えに行くから。

朝、早いけど用意しておいてね!」



スケジュール表には、
朝6時出発と書いてあった。



「あと、お父さんから話は聞いていないかな?」



「父からは
何も聞いていません。

……実は、
緒川さんが家に来た日に
喧嘩をしてしまって…。

あれから口利いていないんです」


「そうなんだ。

……もしかして、
僕が家に行ったからかな??」



「いえ、そうではないんですけど……」



緒川さんが来たことも
原因の一つだが、

そうではない。



小さくため息をつく私に、

緒川さんは心配そうに声をかける。



「この仕事は
本人のやる気が一番なんだ。

だから、
嫌々はやってほしくないんだ。

さっきの子たちも
AVに出演する時は

それなりに理由があったけど、

今は真剣にやっている」



「……ぁ、はい…」



「とりあえず、
葵ちゃんの家の状況は
僕も理解出来たから、
ちょっと考えるよ。

明日の帰りにでも、また話そう」



「…はぃ」



部屋を出ると、
未だにパッケージのことで
討論している女性たちがいた。



私の存在に気付き、

「葵ちゃん、またね!!」と
手を振ってくれる。


軽く頭を下げ、
事務所をあとにした。


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