嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-
シホの事情-シホside-
葵ちゃんと顔を合わすなんて、
心臓が止まる思いだった。
後ろを振り返り、
歩き出した葵ちゃんを確認すると、
路地を進み、
ある雑居ビルに入った。
インターフォンを押さず、
「おはようございます」とドアを開け、
中へ進んで行く。
事務所のテーブルでは
3人のギャルが、
好き勝手言い合っている姿が目に入った。
その中に面識があるナツミがいた。
アタシの存在に気付き、
「シホじゃん!」と声を上げる。
「久しぶり……元気?」
気まずそうに声を出すアタシに、
他の二人は
ジロッと目を向けた。
女の嫉妬が一番怖い。
目を合わせないように、
ナツミに小さく手を振り、
奥から出てきた男性に頭を下げる。
「ご無沙汰しています」
「よく来たね。
こっちで話そうか?」
向かいに腰を下ろすのは、
緒川正也。
……そう。
先ほど、
葵ちゃんと話をしていた
事務所の社長だ。