嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-



「君から電話が来るなんて嬉しいよ。

こういう仕事は
1回やれば、2回も3回も一緒だからね」



「……そ、そうですか。

さっき葵ちゃんに会いました」



「葵ちゃんは明日、軽井沢で撮影なんだ」



「彼女……嫌がっていませんか?」



「最初は嫌がっていたけど、
慣れてくるさ。

あの子はマニアを擽る
良いカラダと顔をしている。

U-15の一番の限界を目指そうと思っているんだ。

ちなみに彼女の母親は見たことある?」



「はい」



「そっか。母親にも興味があるなぁ」



顎鬚を触りながら、
唇の端を上げる緒川さんは、

アタシのことをチラっと見た。



ギャルたちの声が
かすかに聞こえる部屋で、

アタシの前に数枚の紙が並べられた。



「君から電話があって、
俺なりに考えた企画なんだ。

一回、目を通してくれる?」



出された紙を手に、文面に目を通す。



「…………」



「どう??」



ソファにもたれ、
腕を組んだ緒川さんが

アタシに鋭い視線を向けた。



「……さすがにこれは出来ません……」



消えそうな声で、言葉を返す。



「でも、
君、お金がほしいんだろう?

この仕事をOKしてくれたら、
100万円出すよ」



「……100万円?!」



大きな金額に気持ちが揺らぐ。



でもこれはアタシだけの話ではない。


アタシだけが傷つく話ではない。


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