【短編】棘のない薔薇
美咲は可愛い。
とりわけの美人という訳じゃないが、何か男心をくすぐる可愛いさがある。
それに、何と言っても美咲は、俺たちを初めて“認めた”女だ。
そこらにいる馬鹿な女共とは違う。
『――――寂しいんでしょ、蓮』
…もちろん、あんたともな。
鼻にこびりついて離れない薔薇の匂いに、俺を搦め捕るような言葉。
ふざけるな。
寂しい?
俺が?
ハッ。
それはあんただろうが。
「……ん、蓮さん」
ハッとして顔を上げると、不思議そうに首を傾げている美咲がいた。
その心配そうな顔に、俺はなるべく優しく笑うように心がける。
「悪い、ちょっと考え事してた」
「どうせエロいことだろ」
「その口今すぐ縫ってやろうか」
クソ。
こんな時にまで出てくんなよ…