花霞む姫君
「そうだな、それしかないだろう。今、堀内の姫は花澄しかいない。」

姫?
突然出てきた時代錯誤なワードに、まさに目が丸くなった。
現代の服を着てるのに話してる内容が時代劇なおじさんたち。

うむ、それしかあるまい。
とかなんとか。
それぞれに頷き合っている。

なんか下手なお芝居を見てるみたいで笑えそうでもある。
現実じゃないみたい。

お願いだから、何の話か説明してよ。


「それにしても伊世子がなぁ。結婚でもしてるかと思ったんだが。」
「伊世子は堀内の家が嫌で東京に行ったのよ。」
「すっかり私は良い人を追いかけていったと思ってたけど… 」
「いやいや、従兄弟の勝平が嫌だったとか…」


「うおほん!おほん!」

叔父さんがまた大きく咳払いをした。


「堀内の姫に対して失礼ではないか、みんな。」


「姫なら姫らしくしててほしかったもんだ。勝手に飛び出して、勝手に死んで…」


「それ以上の発言は、堀内家を冒涜することになりはしませんか。」


と、凛と響く声で言ったのは、お父さん。

その言葉の強さに、親戚衆は押し黙った。

お、お父さんまで時代劇の人になっちゃった。
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