花霞む姫君
「それにしても伊世子姉さんの葬式を静かにだしてやりたかったもんだ。」

「ま、それは言ってもしかたないさ。俺たちがこの家に生まれちまった以上はな。」


どこか寂しそうな、それでいてあきらめのついている二人の表情は、それでもさっきよりはずっと穏やかだった。


「父さん、そろそろ説明してくれないか。」

と、口を挟んだのは翔太。

「ここにくれば詳しい話をしてくれる約束だろ。」
「ああ、すまなかった。花澄も、突然の話で驚いただろうね。悪かった。」


そりゃあそうよ。
びっくりしない人なんていないと思う。

「お母さんは知ってたの?私と翔太がその…」

「女の子が産まれたときから覚悟していたわ。あなたが伊世子お義姉さんの次の姫になるだろうって。」

「そう、その姫だ。」

と翔太は大きな声を出した。

「その姫ってのは一体なんなんだよ。今時、時代劇じゃあるまいし。」


叔父さんとお父さんは顔を見合わせた。
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