花霞む姫君
「親父たちがしたつらい思いを、今度は俺たちにそのまんま背負わせるわけだ。」

翔太が嫌みたっぷりに言った。

「しかもこの現代に。藩だの姫だの、もう何百年も昔の話じゃないか。それを今まで受け継いできたって?変だよ、異常た。藩なんて今はなんの関係もない!俺はこんなの認めないからな。」

「お前がどう思おうと、事実だ。」


とお父さんが厳しい声で言った。


「県だの市だのは、所詮今の政府が管理しやすいように作ったただの枠組みであって、それ自体に意味はない。むしろ、自然発生的にできた枠に名前を付けた藩が最も人間に近く、土に近い。」


「土に…近い?」


「お前のほうが感覚的にわかっているかもしれないな、花澄。」

と、お父さんは少し微笑んだ。


「俺たちが、そして祖先が受け継いできたものは、時代や政府が変わったからといってそう簡単に変わるもんじゃない。突然現代人になんてなれるもんじゃないんだよ。なった気でいるだけだ。」
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