花霞む姫君
「取り戻したいと思わない、ここ?」

と先輩は私を振り返った。

木漏れ日が先輩の顔に当たる。
先輩はすごく真剣な、それでいてちょっと寂しそうな顔をしていた。


「そんなこと、できるんですか?」

「できるよ、僕なら。」

先輩はニコッと笑った。

「僕の家はね、堀内家の前にこの飯畑藩を納めていた笠原家に使えていた、代田家の末裔なんだ。」
「はあ…」

「ようするに君と釣り合うってこと。
それに、君を守ってやれるだけの力もある。」

「力?」

「うちの親父は国会議員の秘書だからね。一地方の公園なんて何とでもなる。」

だから、と先輩は続けた。

「僕と結婚しよう、今すぐ。」
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