静かなる

慎吾は願った。

誰に頼んでいるのだろうと思いながら。

存在を信じていない神に、妻の青白い顔色を、以前のいきいきした色に戻して欲しいと願った。


あさみは慎吾の心を聞きながら、意識の奥で、硬い鉄格子に身体をぶつけ、痣だらけになりながら、血まみれの手でどうにか脱出しようとする、そんな思いで居た。

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