ヴァンパイアと人間
智乃君の問いに頷く
「今朝、誰かに声を掛けられて振り返ったら青い瞳をした男の人が立ってて...そのまま気を失ったの」
「それで?」
「気付いたら保健室で、2年生の桐生先輩が道端で倒れてるあたしを保健室まで運んでくれたの。名前も名乗ってないのにあたしの名前知ってたっけ...」
「そいつの瞳の色、見た?」
「うん。青色だった」
「チッ...動き出したか」
「動き出すって何が?」
「なんでもない。涼子、実桜から絶対離れるな」
「らじゃー」
あたし、何しちゃったの...?
翔琉を...殺そうと...?
「実桜の意思じゃねえってことは翔琉も知ってる」
雅樹君があたしに近付いて呟いた
「雅樹君...」
「アンタはなんも心配すんな。俺らがそばに居て守るから」
「うん...」
あたしには、何も出来ないの...?
「実桜ちゃんはいつも俺らに何かをくれてるよ」
「え?」
何を?
「笑顔、楽しい思い出」
「笑顔と...思い出...?」
「ヴァンパイアの世界ってね、つまんねーんだぜ?笑顔なんて絶対ないし、楽しい思い出さえも許されない。人間の世界に来ない限り、分からないんだ。それを実桜ちゃんは、いっぱいくれた。それだけで俺らはもう幸せなんだよ」
「智乃君...」
智乃君は笑顔だった