xxxFORTUNE
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佐久間さんの部屋の前へ到着すると、まず里音が扉をノックする。
が、中から返事はない。
いつもこうなんだ、と付け加えて言うと早速扉を開いた。
特別、部屋に鍵があるわけでもないらしい。
「ホタル、こいつこれからここで働くって」
恋千くんは、部屋には入らずに廊下から声をかけていた。
カーテンは閉められ、光の遮断された薄暗い部屋。
虚しく置かれたベッドの上で、佐久間さんは丸まってこっちを見ていた。
明かりのないせいで、よく見えないけれど。
「はじめまして、楼那すずです」
自己紹介をするあたしを目にした途端、震えだしたような気が。
「……く.来るな!」
やはり、正解だったらしい。
震えた小さな声を、耳が拾う。
これって、すっごく警戒されてる?
「消えろ、どっかに行っちゃえよ!」
布団に潜り込んで尚、警戒の色は濃くなるばかり。
恋千くんと里音の判断で、今日はひとまず引き上げることにした。