xxxFORTUNE



佐久間さんの腕に、一層力が入るのがわかる。

事情は知らないけれど、何かが怖かったのかもしれない。



「ぼくは、何回も死にたいって思ったけど……っ死ねなかった」

「うん」

「うぅっ、ヒメ、あったかいね。
ヒメは魔女だけど、人間もこんなにあったかいのかな」


流れる涙があたしの首を濡らしてく。

佐久間さんは、どんなことを考えているんだろう。

どんなことを思い出しているんだろう。


どんなことに、こんなにも怯えているんだろう。

人間不信のきっかけって、なんだったんだろう。


きっと愛琉さんなら知ってる。

でも、これ以上真実を求めてもいいのかしら。


あたしはエシャルの姫で、人間界の住人じゃない。

他人の事情にわざわざ足を踏み入れるのは、相手を余計に傷つけてしまうんじゃ………。



「人間は、あったかいわ。
だって人間の佐久間さんは、とってもあったかいもの」


見つけに来たはずの“幸せ”を、あたしが深入りしたら壊してしまうかもしれない。


「ぼく、久しぶりに外に出たよ」

一生懸命笑った彼を見て、なんだか胸が苦しくなった。






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