xxxFORTUNE
ココアブラウンの長めの前髪を風に揺らし、目の前に立ちはだかる。
「俺、今日おまえと一緒に帰れねぇから。
帰る時は、里音と帰れ」
不機嫌極まりない愛琉さんだ。
「え、里音は今日一緒に帰れるの?」
ここしばらく、帰宅時は愛琉さんと一緒が多かった。
そもそも黒猫の件もあったし、あたしが魔女だとバレないようにフォローするためなんだとか。
って、1人で帰らせてくれないのは里音が最もな原因なんだけど。
あまりにも心配性で、方向音痴なあたしを気遣ってくれているみたい。
さすがに、通学路くらいは覚えられたんだけどね。
ただ、その里音は委員会とかで忙しくて帰りの時間が合わないの。
そこで代理として、愛琉さんが一緒に帰ってくれてたわけ。
「放課後に用事がないらしい。
里音が嫌なら誠に頼れよ、恋千はやめとけ」
「どうして?」
「恋千は家着いた後に、万一2人きりだと何されるかわかんねぇし」
ええと、うん、そうよね。
確かに誠のほうが、いろんな意味で安心かもしれないわ。
対応がけっこう冷たいことを除いて。
「ね、ひょっとして愛琉さん、あたしのこと心配してくれ──痛っ」
ふと思って口にすれば、拳が頭上に降ってくる。