xxxFORTUNE



「……じゃあ、ヒメはぼくを外の世界に連れ出してくれるの?」


恐る恐る口から零れた言葉に、あたしは一瞬静止。


もしかして、佐久間さんは本当は外に出たいのかもしれない。

人間は怖いけど、本当は誰かと一緒にいたいんじゃないかしら。



「佐久間さんさえ良ければ、明日外に出てみない?」

だから迷わず、誘ってみることにした。


「閉じ込めるんじゃなくて、黒猫を自由にしてあげるため探すついでに」

微笑みかけると、相手の顔に広がる満面の笑顔。


「うん!
ヒメと一緒なら、ちょっとだけ外に出たいかも」



もし佐久間さんに尻尾があったのなら、全力で振っていると思う。


今まで外に出られなかったのは、きっと少し勇気が足りなかっただけ。

その少しの勇気を、これからはあたしがあげよう。



「黒猫もだけど……まずは恋千くんよね」

「ぼくっ、洋館のどこかに隠れてないか探してみるよ」


呟きに反応して、笑顔のまま部屋を飛び出した彼に

「あたしも探す!」

逆に元気を分けてもらってしまった。






< 143 / 300 >

この作品をシェア

pagetop