xxxFORTUNE
顔を歪ませた彼を励まそうと、言いかけて呑み込んだ。
「ううん、なんでもない」
言っていいか、わからなかったの。
見なかったことにって言われた、手帳のこと。
もしあの日の朝あたしが行動していたら、恋千くんは家出なんかしなかったかもしれない。
ぶつかった時に落とした手帳が何なのか、気づけてたら違っていたのかもしれない。
あたしが、朝食を作ってから恋千くんを呼びに行っていたらこんなことには。
「友達の家に泊まってるならまだしも野宿とかしてないかな、あいつああ見えて寂しがりなとこあるから絶対独りじゃいられないだろうし、風邪とか引いて倒れてたりでもしたらオレ───」
「落ち着けバカ」
だんだん早口になっていく里音の声を遮って、愛琉さんが終止符を打つ。
「恋千は頑丈だ。
ちょっとやそっとじゃ倒れねぇよ。
つーか、むしろ倒れてたらとっくに見つかってる」
確かに、それもそうよね。
倒れていたなら、誰かがすでに見つけて救急車を呼んでいるかもしれないもの。
そうしたら、身分証とかから調べて洋館に連絡が来るはずだわ。
「僕の予想だと、友人宅を移動しているのではないかと思います。
徹底的に探しても見つからないなら、どこかに隠れているはずです。
あくまでも、予想ですが」