xxxFORTUNE
首を傾げてみせると、おばあ様は写真の真っ黒い髪の赤ちゃんを指差して。
「この子は、人間の血が多く魔法はほとんど使えない。
だから、エシャルと人間界のどちらで生きていくかを選択できるの」
次に、桃色の髪の赤ちゃんへと指を移動させて。
「逆にこっちの子は、魔女の血が多く強力な魔法が使える代わりに、人間界へは特別なことがない限り行けないの」
わかるかしら?と真っ直ぐ見つめられ、コクンと頷いた。
まるで夢のようなお話だと思った。
交わるはずのないエシャルと人間界。
けど、長い歴史の中、何が起こるかなんて未知数ね。
「ところでローナ、人間界はどんな場所かしら?
私が行った時には、自然が多かった気がしたけど」
「自然……?
そうね、木や花はたくさんあるわ。
でも、街には建物が多かった気がする」
オレンジ色のランプが、優しい光であたしたちを包み込む。
人間界の話をしながらアルバムを捲って、少しだけ自分が幼い頃に戻ったような…そんな錯覚がした。
人間界のことを訊かれる度、あたしは早く洋館に行きたいと思ってしまう。
ひょっとしたら、姫という立場から逃げたいのではないか。
エシャルに戻ってきて、そんな自分の弱さに気がついた。