xxxFORTUNE
「でも、持ってるだけで充分だわ。
なんだか、エシャルにいても人間界と繋がってるみたいで嬉しいの」
エシャルに戻ってわかった。
“ここ”を離れるのが、すでにつらくなってるってこと。
もしもエシャルの姫じゃなかったら、人間界にいられるのに。
けれど姫じゃなかったら、そもそも人間界には来れなかったわけで……。
「待てって!
嫌なら無理に戻る必要ないだろ」
開いた玄関から聞こえてきた声に、一瞬ドキッとした。
まるで、心の声を聞かれているような気がしたから。
「自分がいたい場所、本当はどこかわかってるんだろ?」
まるで、エシャルに戻りたくないあたしの気持ちを言い当てられているみたいで。
「放っておいてください。
あなたには関係のないことです」
「放っておけないから、こうやって引き止めてるんだって」
様子を窺うに、里音が必死に誠を説得しようとしてる。
誠の手には、大きな荷物。
「里音、そんなヤツに構うな。
こいつは一緒に暮らしてきた俺たちには関係ねぇっつってんだ。
心配してやる価値すらねぇよ」