xxxFORTUNE
だから結局、人間界が恋しくなったの。
対等の存在として扱ってくれる人間界が。
「あたしは、エシャルに帰りたくないって……思った。
つらい思いをしてるのは、あなただけじゃない」
訴えかけると、交わった視線から誠が先に目を逸らす。
「誠は、あたしみたいに弱くない。
……ちゃんと、ご両親と話し合って?」
最後に、少しだけ微笑みかける。
話していたら、あたしのほうが泣きそうになっちゃった。
「えへへっ、言いたかったのはそれだけ!」
泣きたいのを我慢して、バレないように明るく振る舞う。
立ち上がってから手の中に杖を出すと、再び誠と目が合った。
「話は終わりよ。
あたし、もう帰るわ。
みんな、誠が帰ってきてくれるの待ってるから」
小さく手を振って、出現した杖を高く上げる。
魔法陣を描いて呪文を唱えれば、見る見るうちに光に包まれて───
◇
明かりのない真っ暗な部屋に独りぼっち。
本が散らばったままの自分の部屋に、無事移動していた。