xxxFORTUNE



「帰ってくるって、ぼく聞いてないよ!
うわぁぁぁどうしようっ、今日は午後時間ないのにぃぃぃいい」

泣きそうな声で言いながら、忙しそうにあちこちを行き交う。

何かの準備に追われているみたい。



「俺のすずっ、帰ってきたの!?」

勢いよく、みんなの集まるリビングとして使っている部屋の扉が開く。


本とペンを持った恋千くんが、それらを投げてあたしの目の前までやってきた。

「ずっと待ってた。
やっぱり俺、先輩いないとダメなんだ。
やる気出なくって」


しょぼんと肩を落とす恋千くんは、なんだか以前より甘えたがりになった気がする。


「ヒメはカミサマのじゃないよっ、みんなのヒメだよ」

そんな佐久間さんの言葉に耳を貸すはずもなく。


「先輩いつまでこっちにいる?
時間あるなら、俺とデートしよ」

「ええと……」

あまりの勢いに、少したじろいでしまう。


「ずるいよ、ぼくも一緒にお出かけしたい」

「ホタルいたら、デートになんないんだけど。
そこんとこ、わかってくんない?」

「わかんないっ」


だんだん、場が騒がしくなってきた。


「ホタル、急がないと遅刻するぞ。
恋千、おまえは勉強しなさい」


騒がしさを止めるように、慣れた様子の里音。

里音の存在が、ますますお父さんやお兄さんみたいに見えてきた。






< 292 / 300 >

この作品をシェア

pagetop