xxxFORTUNE
「帰ってくるって、ぼく聞いてないよ!
うわぁぁぁどうしようっ、今日は午後時間ないのにぃぃぃいい」
泣きそうな声で言いながら、忙しそうにあちこちを行き交う。
何かの準備に追われているみたい。
「俺のすずっ、帰ってきたの!?」
勢いよく、みんなの集まるリビングとして使っている部屋の扉が開く。
本とペンを持った恋千くんが、それらを投げてあたしの目の前までやってきた。
「ずっと待ってた。
やっぱり俺、先輩いないとダメなんだ。
やる気出なくって」
しょぼんと肩を落とす恋千くんは、なんだか以前より甘えたがりになった気がする。
「ヒメはカミサマのじゃないよっ、みんなのヒメだよ」
そんな佐久間さんの言葉に耳を貸すはずもなく。
「先輩いつまでこっちにいる?
時間あるなら、俺とデートしよ」
「ええと……」
あまりの勢いに、少したじろいでしまう。
「ずるいよ、ぼくも一緒にお出かけしたい」
「ホタルいたら、デートになんないんだけど。
そこんとこ、わかってくんない?」
「わかんないっ」
だんだん、場が騒がしくなってきた。
「ホタル、急がないと遅刻するぞ。
恋千、おまえは勉強しなさい」
騒がしさを止めるように、慣れた様子の里音。
里音の存在が、ますますお父さんやお兄さんみたいに見えてきた。