xxxFORTUNE



遠回しに訊くのも嫌だったから、率直に質問。

対して、天井を見つめたまま返答される。


「生まれた場所に、帰りたい」

微かに掠れた声が、しっかりと耳に残る。


前に、帰りたいと寝言で訴えた愛琉さんの姿が瞼に蘇った。


「それって、」

言いかけたあたしに、教えるように続ける。


「選択肢なんていらねぇのに。
小さかったから、別にどっちでも良かったんだ。
結局は、俺じゃなくて親が決めた」

「そう……」

「けど、俺が生まれた世界も見てみたい。
おまえ見てたら、エシャルもいいとこなんじゃないかって考えた」


あたしは、察した。

愛琉さんは迷ってるんじゃない。


海外か洋館かで悩んでるんじゃなくて、叶わぬ願いを願っていたんだ。



「エシャルに、行きたいのね」

「でも、俺じゃいけねぇだろ」


愛琉さんは、生まれた時に人間界で暮らすことを親に選ばれた。

エシャルから人間界に行くのはある程度簡単だけど、人間界からエシャルに行くには何か事情がないと難しい。


愛琉さんのご両親が、人間界で一緒にいるのはそのためだ。

エシャルに、人間界に生きる人が来ることはなかなか許可が得られないことだから。






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