xxxFORTUNE



「どうしたの?」

何度も繰り返しあたしを呼ぶその声に問いかけて。

「ヒメの呪文。
人間が怖くなくなるように」

うん、全然わからないわ!


もしかしたら佐久間さんは、魔法使いの弟子か何かなのかしら?



相手にできる気もしなかったので、食べ終わった食器を片づけようとキッチンへ向かう

「待って、どこにも行かないで、離さないから」

が、途中で引っ張られて動けなくなる。



あたしの腕をがっちり掴んだ佐久間さんの、見つめてくるのは訴えるような瞳。

キラキラした、澄んだ瞳。



「えっと、あのぅ…佐久間さん?」

どうしたのかしら。

急に寂しそうな顔になったわ。


「ぼく、友達がいないんだ。
ヒメは友達だよね?」

唐突な言葉と不安そうな表情が、あたしを見下ろす。

詳しい事情は知らないけれど、これだけは言えるの。


「えぇ、大親友よ!」




今頃になって思ったのだけれど、そもそも、彼らがこの洋館に住んでいるのは…なぜ?

家族と一緒ではなく、あえてこの洋館にいるのは…なぜ………。



溢れた疑問に、食器が映すあたしの顔は見事なまでに歪んでいた。

“ここ”は、まだよくわからない。






< 47 / 300 >

この作品をシェア

pagetop