xxxFORTUNE
「どうしたの?」
何度も繰り返しあたしを呼ぶその声に問いかけて。
「ヒメの呪文。
人間が怖くなくなるように」
うん、全然わからないわ!
もしかしたら佐久間さんは、魔法使いの弟子か何かなのかしら?
相手にできる気もしなかったので、食べ終わった食器を片づけようとキッチンへ向かう
「待って、どこにも行かないで、離さないから」
が、途中で引っ張られて動けなくなる。
あたしの腕をがっちり掴んだ佐久間さんの、見つめてくるのは訴えるような瞳。
キラキラした、澄んだ瞳。
「えっと、あのぅ…佐久間さん?」
どうしたのかしら。
急に寂しそうな顔になったわ。
「ぼく、友達がいないんだ。
ヒメは友達だよね?」
唐突な言葉と不安そうな表情が、あたしを見下ろす。
詳しい事情は知らないけれど、これだけは言えるの。
「えぇ、大親友よ!」
今頃になって思ったのだけれど、そもそも、彼らがこの洋館に住んでいるのは…なぜ?
家族と一緒ではなく、あえてこの洋館にいるのは…なぜ………。
溢れた疑問に、食器が映すあたしの顔は見事なまでに歪んでいた。
“ここ”は、まだよくわからない。