xxxFORTUNE
告げられた事実に、思わず目を見開いた。
人間界に、迷い込んだ魔界の者。
おかしいわ。
「でも普通、魔界から人間界へは行けないはずじゃっ……」
「そうよ、ベル。
けれど手違いから、何かが迷い込んだ。
それは紛れもない事実なの」
一瞬だったけど、語るアヴァルア校長先生の顔に暗い影が見えた気がする。
迷い込んだ者が何者なのか、はっきりしない限り油断できない。
万一、人間界で魔法という便利なものが使われてしまったら………
もしも悪いことに魔法を使ってしまったら、人間には戦う術がない。
魔力とは、それほどまでに強力な力を持っているものだから。
「そこでベル、あなたは課外授業として人間界に来ることが正式に許されている存在よ。
だから、あなたにその迷い込んだ者を捕まえてほしいの」
今回アヴァルア校長先生が人間界に来た理由は、そこにあったらしい。
校長とは言え、しょっちゅう人間界に来れるわけじゃない。
ましてや、人間界と魔界──エシャルを行き来することは、精神的にも体力的にも負担が多い。
「もう時間ね」
状況を整理するあたしに構わず、呟いたアヴァルア校長先生の身体は半透明になりかけていた。