xxxFORTUNE
エシャルでは、一部使い魔として黒猫が存在する。
また、黒猫は不幸の象徴。
特別大きな魔力を秘めていると、授業で習ったことがあったわ。
あたしと目が合うと、慌てたように黒猫は窓のほうへ駆け寄った。
それから、光を放って窓が勝手に開いていく。
もしかしてあの黒猫、魔法を使ってる?
「待って!」
窓の前まで走ったけど、とっくに間に合わなくて。
逃げるように窓から飛び降りた黒猫は、一度もこちらを振り返らずに闇に溶け消えてしまっていた。
「きゃっ!」
直後、背中を押すようにすごい突風が吹いて───
窓の外へ放り出されたあたしは、目をぎゅっと瞑ったまま。
教室は2階、落ちれば怪我をするかもしれない。
だけど、どこも痛くないのはどうして?
ゆっくり視界を開けば、移るのは白い壁。
上を向く左手は、しっかりと誰かに掴まれてる。
それから、投げ出されてしまったあたしを引っ張り上げて。