希望という名のきみへ
駆け出した足元には、テラの大地が広がっていた。
踏みしめるほどに香る、草いきれ。
その匂いに咽ながら、その柔らかな感触が何なのか判らぬまま、わたしは大地を踏みしめていた。
ミテラの無機質な床とは全く違う、不規則な隆起と重なり。
草で覆われた大地は、見た目の美しさに反して走りにくかった。
案の定、わたしは足を取られて転がった。
大地はミテラの床のように平らではないのだ。
地面に身体を打ち付けられたわたしは、そこで不思議な音を聞いた。
微かに震える高周波音。
目を閉じると、それはわたしの頭の中で歌い始めた。
「ほう、鈴虫がもう出てきているのか」
そんな声がわたしの隣りで聞こえ、わたしは永遠に追いつかれたことを悟った。