希望という名のきみへ


すでに陽は落ちた。

辺りは薄暗く、ここが何処なのかもわからない。

闇の中に光る点がいくつも浮かび上がった。


「なに?」


「野犬だ。

かつて人間に飼われていた犬たちが、今は野生に戻って我々を脅かしている。

これも見捨てた報いだ。

だが、食われる訳にはいかぬ」



<ウウゥ……、ガウッ、ガウッ>



闇に紛れて姿こそ定かでないが、その唸り声は殺気に満ちていた。

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