希望という名のきみへ


わたし達地球人は、残留放射能や有害な紫外線から身を守る為、保育カプセルを出ると同時にスキンスーツを装着する。

スキンスーツはリヒテンシュタイン博士が発明した保護膜だ。


シェルに守られているミテラであっても、機器の故障で空気が外気に汚染される危険もある。

わたしが担っていた空気清浄機システムのフィルター清掃作業は、日常業務でありながら、実は危険を伴う作業だったと言える。

シールドが破られ紫外線がシェル内に降り注げば、それによって受ける損傷は計り知れない。

我々ミテラの住民は、そう教えられ、常に不測の事態に怯えていた。


<スキンスーツ>


それは、特殊な葉緑体を含む蛋白質で合成され、被装者の成長と共に自らも発育を遂げる有機体である。

スーツとわたし達は、ニードルという小さな針で繋がっている。

ニードルを通してわたし達はスーツにアミノ酸を提供し、スーツはそれを糧に成長し、余剰栄養を蓄積して非常時に備える。

スーツを装着しているわたし達自身も数日間は経口食を取らずとも生存が可能なのだ。

生体エネルギーが不足すると、ニードルからアミノ酸が少しずつ体内に吸収される。

わたしが未だ空腹を感じないのはそのためだ。

このスーツは、わたしの皮膚の代わりであり、わたしを守る子宮なのだ。


だが……


わたしは永遠を見た。


彼は生身に、薄布を纏っただけ。

この地球の空気を吸い、育まれた種子を食べ、それでも守られている。


このスーツにいったい何の意味があるのか……

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