希望という名のきみへ
それはわたしの耳の後ろにあった。
永遠が見つけた耳の後ろの小さなスイッチを左右同時に押すと、わたしの身体を覆っていたスーツは小さな断片となって剥がれ落ちた。
開放感とムズ痒さ。
何より、一糸纏わぬ自らの身体を見て驚いたのはわたし自信だった。
その皮膚は白く、その下を流れる血管が青く透けて見えていた。
張り詰めていた頬の緊張が取れ、わたしの表情は奇妙に歪んだ。
「その方がずっとミクらしい」
同じスーツを纏ったミテラの住民達は、お互いを見分ける術をもたない。
頭皮を除いた身体全体を緑のスキンスーツに覆われているからだ。
顔の造作も表情もその下に埋もれてしまう。
だから自ずとスーツに刻印されたナンバーで呼び合うことになる。
互いの身体も、顔も、生まれてから死ぬまで知ることはない。
共に生きる喜びも、肌を重ねる温もりも、死ぬまで味わうことはない。