希望という名のきみへ
楽園


わたしは永遠に抱かれて眠り、朝を待った。


イメージとして植え付けられた受胎。

それは、自分の体内でもうひとつの命を育むということ。

月に一度子宮に戻された受精卵がもし受胎すれば、わたしの中でもうひとつの命が成長していく筈だった。

わたしはその命の守り手となる。

ミテラで受けた教育は、そこまでだった。


出産はリスクを伴う自然分娩ではなく、帝王切開による。

生まれた子供は、わたしに抱かれることなくミテラの中枢の管理することになる決まりだ。

それがミテラでの出産マニュアル。


わたしとて、自分を生んだ母の顔を見たことがなかった。

新生児は飼育カプセルの中で管理されて育ち、やがてミテラの中枢マザーコンピュータに繋がれ地球人としての教育を受ける。

全てはリヒテンシュタイン博士の完成させたプログラムに沿って執り行われ、地球人としてミテラの構成員となる。



だから、わたしは子供というものを見たことがなかった。



自分が遠い昔、子供だった、という記憶を除いては。
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