希望という名のきみへ


ミテラの空は赤かった。


何故なら、シェルが紫外線を遮断するフィルターの役目を果たしていたからだ。

そしてシェルの半分は太陽エネルギーを吸収する為の発電パネルで覆われていた。

エネルギー発電のため、太陽に向かう反面は闇に閉ざされ、残りの反面からはフィルターを通した僅かな薄赤い光が取り込まれていた。

食事を合成した人工栄養に限っていたミテラの地球人にとって、太陽の光は熱エネルギーとしての役割しか担わない。

だが、ここはどうだ。

夜になれば日が沈み、朝になれば日が降り注ぐ。

木々は茂り、木陰を作る。

気流によって風が吹き、大気がよどむことはない。

人は太陽の恵みで育った植物の実を食べ空腹を満たし大きくなる。

ここには生命の営みがある。



テラの空は青かった。

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