希望という名のきみへ
「トワ、わたしは生かされていたのか、それとも生きていただけなのか?」
今まで疑問をいだくことなく過ごしてきた日常に、初めて不安を抱いた。
「わたしは、ただ生きていただけなんじゃないか?」
わたしの頬を、動く大気が優しく撫でた。
「生きるということが、それだけで奇跡なのだと、ミク、お前は知らないのか?
この泉に辿り着き、命を育む機会を得られただけで、我らは奇跡の存在なのだ」
確かに、この地球上に生き延びた地球人と新人類。
その僅かな数を合わせても、人類の存在は奇跡に近い。
生かされることも、生きることも、さして違いなど無いのかもしれない。
いつの間にか、わたしの横には永遠が寄り添い、温もりを与えてくれていた。
「ミク、怖がることはない。ここは命の泉。ここに居る限り、我らは安全だ」
そう言って、永遠の口がわたしの唇を塞ぐ。
それは言葉以上に、わたしに安心を与えてくれた。
「トワ……」
わたしの声に応えて、永遠の舌がわたしの口元を優しく拭った。