希望という名のきみへ
「ダイチはわたしの子なの。彼を身ごもった時は辛かったし、不安でもあった。
やっぱり種を超えての受胎は拒絶反応が半端ないもの。
無事生まれるかも不安だった」
「ここには、地球人の男もいるのか?」
わたしの驚きは当然だった。
今までわたしが見た地球人は皆女だったのだ。
ミテラはいわば女性だけのコロニーだ。
男性とは即ち、我らが崇拝する故リヒテンシュタイン博士を意味する。
「いるわよ。彼の名は、地球白夜(チキュウハクヤ)。
彼自身はミテラからの脱走者」
「脱走者?!」
「あなたは?」
「わたしは事故で……」
「そう……」
フウはそれ以上を語らなかった。
彼女はそれ以上の事実を知らないだけかもしれない。
だからわたしはその状況を推し量り、考えた。
リヒテンシュタイン博士とは血を異なる男性の存在の意味を。
フウは大地を身ごもった時のことをわたしに詳しく話してくれた。
わたしと同じ種を超えた子供を授かった風の存在は心強い。
わたしに希望と勇気を与えてくれた。
だからと言って、この苦しみが軽減されることはなかったけれど。