希望という名のきみへ
数日の後、風は新人類の子を泉に産み落とした。
新人類の子には鰓がある。
泉に産み落とせば、後は泉が育ててくれるのだ。
では、大地は?
「ダイチはわたしが母乳で育てたの。初めての経験だったけど、他に選択肢はなかったから」
わたしもこの子を産んだら、自らの手で乳を与えなければならないのだろう。
「ダイチは他の子より成長が遅いの。
新人類の子は泉の滋養でほぼ十年で成人となる。でも、ダイチはその倍の時間をかけて大きくなってる。
ほら、この子。永遠の子ソラはダイチと同じ日に生まれたのよ」
空と呼ばれたその子は、見た目十歳ほどの体格だった。
成る程、永遠に似た美しい顔立ちをしていた。
対するダイチは、まだやっと上手く走り始めたばかりという幼児だ。
「わたし達新人類がこのテラで今まで生き延びてこれたのは、この成長の早さ故なのよ。
世代交代を倍の速さで進めることによって、環境に順応してきた。
それが旧地球人との決定的な違い。
ダイチが成人になる頃には、ソラは四人は子供を産んでいる筈よ」
「フウさんはおいくつなのですか?」
「えっと……、わたしは成人してから十年だから……、地球人として換算すると二十歳くらいかしら。
産んだ子は、この子で三人目。少ない方ね。
ダイチを産んだ時のダメージが強くて、しばらく男性として過ごしていたから」
「わたしは生まれて三十年です」
わたしは風の話に頷かざるを得なかった。
その繁殖力の差は歴然としていた。
彼らの方が種として優れているのは明らかだった。