希望という名のきみへ
「我ら新人類は常にウォークアラウンドに出て相手を求める。
そして交わり子を宿すのだ。
だが、泉の外は危険が多い。男性としての力を持たないお前には、ウォークアラウンドは無理だ」
永遠はわたしを泉に残し、一人泉の外へ出るという。
それは彼なりの気遣いなのかもしれなかった。
わたしには永遠の子を宿すことは叶わぬと。
あの苦しみを目の当たりにした今は、それも確かなことだった。
わたしは子だけでなく、必要も失うのか。
「フウは?」
咄嗟、彼女のことが頭に浮かんだ。
「フウも暫く身体を休めたら、じきウォークアラウンドに出るだろう。いつものようにな」
確かに、永遠と共に歩いてきた泉までの道のりは過酷だった。
この広い地球をたった一人で旅するということは、常に危険と隣り合わせの日常なのだ。
だから永遠は、夜は必ず高台の祠で休んでいた。
川岸で襲われた野犬の群れを思い出す。いや、敵は野犬だけではないに違いない。
いざとなったら身体を張って闘わなければならないのだ。
だからと言って、ここに一人置き去りにされるのは嫌だった。