希望という名のきみへ

「我ら新人類は常にウォークアラウンドに出て相手を求める。

そして交わり子を宿すのだ。

だが、泉の外は危険が多い。男性としての力を持たないお前には、ウォークアラウンドは無理だ」

永遠はわたしを泉に残し、一人泉の外へ出るという。

それは彼なりの気遣いなのかもしれなかった。

わたしには永遠の子を宿すことは叶わぬと。

あの苦しみを目の当たりにした今は、それも確かなことだった。


わたしは子だけでなく、必要も失うのか。


「フウは?」


咄嗟、彼女のことが頭に浮かんだ。


「フウも暫く身体を休めたら、じきウォークアラウンドに出るだろう。いつものようにな」


確かに、永遠と共に歩いてきた泉までの道のりは過酷だった。

この広い地球をたった一人で旅するということは、常に危険と隣り合わせの日常なのだ。

だから永遠は、夜は必ず高台の祠で休んでいた。

川岸で襲われた野犬の群れを思い出す。いや、敵は野犬だけではないに違いない。

いざとなったら身体を張って闘わなければならないのだ。



だからと言って、ここに一人置き去りにされるのは嫌だった。
< 65 / 99 >

この作品をシェア

pagetop