希望という名のきみへ
死の灰によって覆われた地球上で、僅かに生き残った人類は、現在我々が神と崇める故アーノルド・リヒテンシュタイン博士によって創られた人工世界ミテラに逃れ生き延びてきた。
当時の博士は変わり者として世俗からは遠ざけられた存在だった。
当初から原子力の限界と危険性を説き、永久太陽電気パネルの開発に心血を注いだ彼は、原子力崇拝者から目の敵にされていた。
だが実際、先見の明があったのは彼だけだったのだ。
彼は私財を費やして人工世界ミテラを創った。
永久太陽電気パネルを装備した浮かぶ小地球、それがミテラだ。
完全なエネルギー自給自足。
放射能に汚染された水や土壌に頼らない人工食料自給。
それはあたかも、放射性物質に地球が汚染されるのを予測したかのような完全循環型の人工世界だった。
ミテラは、彼の意志をマザーコンピューターが正確に受け継ぐことで、人類を放射能から守り、その滅亡を食い止めた。
わたしの存在がその証。
今までずっとそう信じてきた。
だが、それは表向きの史実だったのではないか。