希望という名のきみへ

言葉が通じることが、僅かな救いである、とわたしは考え始めていた。

わたしの発する問いに、少なくとも彼女が答えを返してくれるのだから。

だが、矛盾もある。

そもそも両性具有の繁殖に、種の未来が託されているとは信じ難い。

優性遺伝の法則は無視されたというのか?

それ程までに、我ら人類の存続は危ういということなのか?


言葉は理解の上に成り立つ情報伝達手段だ。

理解のないところに意思の疎通は成り立たない。

わたしは、この宇宙永遠という新人類の発した言葉を無視することにした。


「何故そう言い切れる。

愚かな者よ。

これが母なるテラが望んだ形なのだ。

産み落とされた子は、母なるテラの泉が全てを担い育てるのだ。

我々は生まれながらにして、平等であり兄妹である。

母なるテラの元で……

母なるテラに見守られて……」


それはまるで、わたしの心を読み取った上での言葉だった。


何故、彼女はわたしの疑問に答えをよこしたのか。

永遠が語りかける声に戸惑いながら、わたしの意識は薄れていった。

恐らく、わたしにの身体は回復の為に、更なる眠りが必要だったのだ。


「ミク、眠るのだ。

全てはお前が目覚めた時に明らかになる」


遠い意識の中で、永遠の声が木霊していた。


「母なるテラは、お前を受け入れた……」


それは、わたしがここで生きるという意味なのか……
< 8 / 99 >

この作品をシェア

pagetop