希望という名のきみへ


そこでは少し身体の大きな子供達が、真剣な面持ちで布を織っていた。


蜘蛛の糸はとても細く、それ故目の詰まった布が織り上がる。

自分の命にかかわる品質なので、皆、できるだけ目を詰まらせようと何度も糸を寄せ固く布を織る。

一日に出来上がるのはほんの僅か。

気の遠くなるような作業なのだ。


出来上がった布は、しなやかで強く、そして軽い。

水を通さず、酸素だけを通す不思議な機能は、恐らく、蜘蛛の糸の粘着性が生み出すものだ。

彼らはこの『シールドスキン』が織りあがると、一人前として認められウォークアラウンドへと出かけて行く。




今日、一人の若者が布を織り上げ、ウォークアラウンドへと旅立っていった。
< 83 / 99 >

この作品をシェア

pagetop