希望という名のきみへ


――嗚呼、良かった……

安堵のため息をつく時間も惜しんで声を荒げた。


「ここも危ないわ。早く洞窟へ逃げるのよ!!」


わたしは大地を手繰り寄せ、その身体を背に負った。


「走るから、しっかり掴まって」


わたしは必死だった。

この泉へと導いてくれた滝の上の洞窟を目指して走った。

途中、逃げ惑う子供の手を引き、叫んだ。


「逃げるのよっ!」


わたしの必死な声に、何人かが従った。

その間も、ミテラから放たれた赤い光は、容赦なく泉の周りに降り注ぐ。



後ろを振り返る余裕などなかった。

< 86 / 99 >

この作品をシェア

pagetop