希望という名のきみへ
何処から手に入れたのか、フォルダーがいくつもついた皮ベルト。
白夜はそのフォルダーに慎重に小さな機械を詰めていった。
わたし達は第三ミテラに進入し、WGS-84座標(db12.02,dl-11.09,dh38.2)に戻す必要がある。
現在位置、即ち泉の上空で爆破すれば、ミテラ諸とも我々も全滅だ。
その為には集中制御室にあるマザーコンピュータにハッキングし、位置データを修正しなくてはならない。
恐らく、それらの小さな機械はその作業に必要なものなのだ。
そんなプログラミングの知識を何処で得たというのか。
わたしは白夜の底知れない知識に驚いていた。
そして、ゴム底のついた靴。
スキンスーツで身を守られていたわたし達は、靴を履く必要はなかった。
が、確かにわたしには靴を見た記憶があった。
幼い時、ミテラの飼育カプセルの中から、コンピュータールームで立ち働く大人達が靴を履いて歩くのを不思議な気持ちで眺めていたことを思い出したのだ。
コンピュータールームには微電流が走っている?
ゴム製の靴はそれを絶縁するため?
どれも、泉での暮らしからは知ることのできない地球人としての記憶だった。
白夜はその足に靴を履き、ベルトを腰に締めた。