恋愛パラドックス
「だからー、何で分かんないかなぁー」
さっきから、オレの家庭教師である美音は
イライラしながら、文句ばっかりぶつけてくる。
「そんなに難しくないでしょ?」
って美音が
俺の顔を覗き込んだ。
(ほら、
またその上目使い)
オレの部屋。
美音が教える数学の問題は、実際そんなに難しくない。
別に頭が悪いわけじゃないし、
ほんとは、とっくに解けている。
でも解けないフリをして答えを焦らす。
そうやって焦らすと、イライラしてくる美音が、可愛くて仕方ないから。
だから問題なのはこの場合、
無意識にすぐ上目使いとかしちゃって、オレをドキドキさせる美音の方だ。
「あーあ。あたし教師向いてないのかなぁ」
美音はオレの対応に、
部屋の真ん中に置いてある、ちゃぶ台にベターとなってへこんでいる。
オレは自分の学習机から、美音がいる後ろへ振り返って言った。
「教師って言ったって『家庭教師』だろうが」
そう言うとすぐに
「それは今の事でしょ!これは将来の話!」
と、いちいちムキになって
「問題が解けない徹平が悪いんだからね!!」
ついには怒鳴って、シュンとなってしまった。
まぁ。ここまでなると流石に可哀想なので問題を解いてあげよう。
「あ!何だか今トートツに分かった気がする!」
棒読みの台詞と一緒にスラスラと数式を解いて
「これでどうですか?美音先生?」
ノートを掲げて隣に座ると、ベターっとなってた美音が上体を起こして喜んだ。
「やれば出来るんじゃん!!」
「先生の教え方がいいんだよ」
なんてお世辞まで言ってやれば、ほら。
満面の笑み。
目を細くして頬がピンク色になって、くしゃっと笑う。
普通の人ならツッコミどころ満載な展開なのに……
この美音の単純さが、オレには堪らなくツボだ。
*