恋愛パラドックス
「なんだよもぅ。ビビっちゃったじゃん!!ってか、もう来ちゃったし!」
「はぁ?なんだソレ」
「だからー。徹平もうすぐ授業終わると思って?迎えに来ちゃったの!!」
そうトンチンカンな事を言いながら、電話の向こうで美音がフフフと笑った。
半信半疑で窓の外を見ると、校門の前に私服の女の子が立っている。
(…美音だ…)
すぐに分かった。
際立って目がいい訳じゃない。
でもわかる。
見間違える訳がない。
「ちょ、…おまっ…」
ビックリし過ぎて、言葉にならない声が出た。
「おい!そんなとこいたら怪しまれんぞっ」
驚いた弾みで、そんなどうでもいい情報が先に飛び出していて。
けど今時、学校内に知らない人は入れないし、近寄らせもしない。
怪しければ即通報なんて世の中なのに…
「だいじょうぶだも〜ん」
なんて美音は、呑気にまた、フフフと笑うだけだった。
まぁ、そんな事よりも実際に心配なのは……
―もうすぐ下校時刻だということだ。
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