或る一人の悲しい男の物語

 先生はいつも夜になるとうなされている。いつも読書をした後1時2時頃眠って、その後すぐうなされ始める。
 それは毎日のように声を上げて、最悪の場合30分ぐらいは叫び続ける。
「どうして毎日うなされるんですか?」
「何か怖がっているからこうなるんでしょう?」
「"何を"怖がっているんです?」
 その質問はいつも発せられる前に喉の奥へと吸い込まれていく。聞いてはいけないような気がして―――。

< 12 / 16 >

この作品をシェア

pagetop