或る一人の悲しい男の物語

 いつも起こしてしまうのだから心配をかけさせているんだが、自分でもどうしようも出来ない。
 まるで足元から伸びる影の様で厄介な奴だ。
「今日もですか?」
 眉の下がった顔を向けてくるイヴの頬を撫でると、きめの細かいスポンジケーキの様だ。滴る汗を拭ってベッドから出る。服は汗で色が変わっていた。
「いつもすまないね」
 胸の前に抱く熊のぬいぐるみのつぶらな瞳が私を見つめる。ベッドの横に立つイヴは「おやすみなさい」と頭を下げて出て行った。

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