×真夏の[変態]恋伝奇×




…今回のことを反省すると、やはり網を振り下ろす直前に目をつぶってしまったのが失敗だ。


そして、思い切り天高く振り上げたのもよくなかった。


あたしの振り上げた網は、カブトムシよりもさらに高く位置する、立派な木の枝をとらえた。


もう一度繰り返そう


いま、あたしの網の中に収まっているのは、カブトムシではなく枝だ。

網はカブトムシに達する前に、木の枝に引っ掛かったのだ。


もちろんその反動で、大きなカブトムシは空高く羽ばたいていった。


その虚しさといったら例えようがない。


横で昆野くんは羽ばたいていったカブトムシを見上げていた。


数秒間、沈黙が続いた。


あたしは網を枝に引っ掛けたまま、昆野くんは空を見上げたまま、静止。


そして何かが弾けたように、二人揃って爆笑の渦に巻き込まれて行った。








< 27 / 78 >

この作品をシェア

pagetop