×真夏の[変態]恋伝奇×




「アッ、鮎だよ。たぶん、模様からして鮎」


「あゆ?えっ、これが噂の鮎なの!すごーい。私初めて見たんだ」


魚住さんが目をきらきらさせて寺島を見ている。

寺島はひたすら首を縦に振るだけだ。


俺たちは裏返った寺島の「アッ」という声に、ひたすら笑いを噛み殺していた。


興奮冷めやらぬ魚住さん。


「嬉しいなぁ。朝から頑張ってて良かったぁ。ちょっと感動」


「えっ、魚住さん、朝からずっと潜ってたの?」


「うん、そうだよ。私、ずっと夢だったんだ。自分の手で魚を捕まえるの」


岡部が大きな瞳をぱちくり。

俺も驚いた。


今まで知らなかった。


都会オーラを持つ気取った美少女は、モリを片手に屈託のない笑みを見せている。




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