×真夏の[変態]恋伝奇×
「これ、良かったらもらってくれない」
そう言って魚住さんが差し出したのは、先ほどの網に入った鮎たちだ。
ちょうど三匹いる。
どれも十分な大きさだ。
「えっ、でもこれって…」
「私の分は心配しないで。朝とったのも何匹かいるし、夜ご飯分はばっちりあるから」
夜ご飯用だったのか。
何だかサバイバルな感じを楽しんでるな。
一瞬考えてから、俺は素直に受け取った。
今晩は鮎の塩焼きだ。
「そうだ。また今度、木陰で休憩する時は私も誘ってね。山登りでも、虫取りでも。私、やりたいことまだまだたくさんあるんだ」
魚住さんが笑った。
その顔は以前見たような、都会オーラを醸し出す上品な笑いではなくて、土臭い、田舎もんの笑いだった。
「モッ、もちろん!」
さっきから黙りこくっていた寺島が、一段と大きな声で返事をした。