×真夏の[変態]恋伝奇×
「ところで今日は何がおすすめかしら、三代目店主さん?」
洋子さんの美声で我に返った。
悪戯っぽい目で俺を見上げ、歯を見せて笑っている。
洋子さんはよく、こんな風に俺をからかうのだ。
ああ、もう。
なんて人だ。
「個人的にはトマトかな。やっぱ、夏野菜食べて元気にならないと」
俺はそれらしい答えを言った。
とは言ってもロクな知識はないから、親父が言っていたようなことを真似たのだ。
まだまだ修行中の身だから、そこは大目に見て頂きたい。
「よし、店主さんが言うならそうしようかな」
洋子さんは俺が勧めた大きく瑞々しいトマトと、それから夏野菜をいくつかチョイスした。
何を作るんだろう。
俺は会計をしている間、洋子さんが夏野菜を手に台所に立つ姿を想像していた。
そうだ、きっと夏野菜カレーだ。