×真夏の[変態]恋伝奇×
それから二人で丸椅子に座って世間話を始めた。
これは習慣になりつつある。
洋子さんが来るようになって、ほぼ毎日井戸端会議が開催されているのだ。
ごく自然な、成り行きで。
おかげで俺んちの店先には、いつも丸椅子が二つ、仲良く並んでいる。
「トオルくんは、いつ向こうに帰っちゃうの」
向こうと言うのは、俺が一人暮らしをしている街のことだ。
隣に座る洋子さんを意識しつつ、俺は平然を装う。
「うーん…。まだわかりませんけど、もうちょっといますよ。親父あんなだし、大学は当分夏休みだし」
それに、せっかく洋子さんが来てくれるのだから、まだ店主代理としてここにあたい。
俺は横目で洋子を見た。
洋子さんはハンカチを頬に当てながら、真っ直ぐに前を見つめている。
日差しが照りつける商店街の通りを見つめながら、俺に何か話し掛けているけど、俺は呆然と返していた。
いやはや、美しい。