×真夏の[変態]恋伝奇×





「さみしいなあ…」


洋子さんが小さな声で呟いた。

それは先ほどと違って悩ましい声だったから、俺は慌てて洋子さんを見た。


やべ、聞いてなかった。


「何がですか」と聞き返したら、洋子さんがこちらを見た。

口元にハンカチを当てているけど、笑っているのがわかった。


目尻に少しだけ皺が見えたけれど、それさえも可愛いと思えてしまうのだから怖い。

洋子さんがふふふと笑った。


「トオルくんが帰っちゃったら寂しいなって、言ったんだよ」


「…えっ?」


「私、トオルくんのこと好きだったから」











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